望郷の鉄道橋
望郷の鉄道橋


 スコットランドの首都エディンバラの北部に、フォース橋という真っ赤な鉄道橋がかかっている。 1890年に完成した歴史ある橋で、菱形を3つ繋いだような特徴的なフレーム形状からレッドダイナソーという愛称で親しまれ、世界遺産にも登録されている。

 私はバックパッカーでヨーロッパを周遊した際に、スコットランドの町々をエディンバラ拠点に見て回った。 一人旅の不安な気持ちもあり、旅先からの帰路、電車でこのトラス橋を通過すると、宿をとっているエディンバラに戻ってこられたなと一安心したことを覚えている。

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 四国で生まれ育った私は、福岡の大学へ進学し実家を出たのだが、長期連休には電車を乗り継ぎ、瀬戸大橋を渡って帰省をした。 瀬戸大橋は鉄道と車道併用の吊り橋だ。「特急しおかぜ」から、鉄橋のトラス越しに瀬戸内の島々を眺めていると、いつも地元に帰ってきたなという実感が湧いてきたものだった。

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 後のイギリス留学時代にクラスメイトから聞いた話だが、イギリス人は高校を卒業すると生まれ育った街を出て、別の街の大学へ進学し一人暮らしを始める伝統があるらしい。 日本では都会出身者は同じ街で大学進学し実家から通学するケースも多いように思う。 イギリスでは、あえて遠くの街へ進学することが推奨されるようだ。自分の知っている場所を出て、広い世界を見て成長しなさいということなのか。

 スコットランドのほぼ南端に位置するエディンバラの若者たちは、きっと北部の街々へ進学していくのだろう。 スコットランドには、ウィリアム王子とケイト妃が学び出会ったSt. Andrews大学など伝統校も多い。 そして休暇の際には故郷への帰路、このレッドダイナソーを渡るのだ。私が瀬戸大橋で感じた郷愁の念を彼らも抱くのだろうかと想像してしまう。