現象を起こす装置
現象を起こす装置


 Kikkerland社の「Rainbow Maker」は、秀逸なコンセプトを持つ玩具だ。日当たりのよい窓に取り付けると、 ソーラーパネルで発電しクリスタルを回転させ、名前の通り室内に虹を生み出す仕組みになっている。

 本体のカバーは透明なプラスチックで内部の仕組みが見えるようになっている。 ボディ上部に取り付いたソーラーパネルからのサステイナブルなエネルギーで、小型のモーターを駆動させる。 モーターの力は複数の歯車により伝達・調整され、下端に吊るされたクリスタルをゆっくり回転させる。 カラフルな歯車の動きがポップで見ていて飽きない。光を拡散させるためSwarovski社製のクリスタルが使われている。 子供用の玩具としてはかわいくない価格となっているのは、この素材へのこだわりのためでもあるか。 対して窓ガラスへの取り付けは、吸盤というかなり簡易な方法が採られている。通販サイトで「吸盤が弱く落下し破損した」という投稿を見た。 この不安定な固定方法は確かにウィークポイントだろう。しかしデザイナーの気持ちはよくわかる。気軽に使うものだからネジ固定にはしたくない。 そもそも窓ガラスだから穴が開けられない。カーテンレールなどから吊り下げることも考えられるだろうが、吊り金物や糸が目立ってしまう。 吸盤でぽこんと張り付いて、くるくる回っている方が軽やかだ。

 Kikkerland社は、ユーモアあふれるプロダクトを多く生み出しているメーカーだ。クイーン・エリザベスがモデルと思しき人形が、白手をつけた掌をひらひらと振り続ける商品などが有名だ。 こちらも女王様のハンドバックにあしらわれたソーラーパネルで発電し、掌を動かす。シンプルなアイデアながら、くすりと微笑まされる明るい力を持っていると思う。

 シンプルな仕組みから多様な現象が起こるギャップが非常に魅力的だ。例えば、オラファー・エリアソンのアートにも同様の効果が覗える。 ミラーや偏光フィルムと投光器を組み合わせ、展示室に光を満たす作品が多い。 現象を起こす装置を構築することは、物理的な形態そのものの美しさを追求していた従来の彫刻表現から、現代のアートが一歩先へ発展した一例だろう。

 Rainbow Makerをガラスに取り付け、部屋に虹があふれると、少しだけ幸せな気持ちになる。生活の質が少しだけ豊かになる予感がする。美しい現象を起こす装置だと思う。